森の未来を拓く家具づくり

伊那谷のアカマツを使った無垢の家具 が2019年11月に立ち上がった。

やまとわが「森をつくる暮らしをつくる」というビジョンを描いて、やりたかった大きなことの1つが、この地域材を使った家具ブランドの立ち上げだった。

やまとわの前身時代から、中村さん(社長)は地域材を使ったフルオーダーメイド家具づくりを10年以上続けてきた。
「オーダーメイドは、普通は使われない木にも価値をつけることができる」と、やまとわになってからも個人や企業向けにオーダーメイド家具を制作してきた。
オーダーメイドだからこそ、様々な木が使える。曲がった木は曲がったなりに利用をつくることができる。変わった年輪の木はその年輪を生かした提案ができる。規格品にはできないアプローチだ。規格品では、木目の違いすらクレームになる。

「生きた木」を使うのだから、同じなんてことはあり得ない。それでも、写真と違う、と言われる。

それに対してオーダーメイドは、世界に1つしかない。それが大切で、それがいいところだ。ただ、オーダーメイド家具は制作できる数が限られる。クライアントと打ち合わせをして、設計図を書いて、制作する。
1つ1つ丁寧な手作りだ。

もっと多くの人に使ってもらえる家具を提案したい、と考えていた。

森を面白くするために、家具を使ってできること

pioneer plantsで最初から決まっていたのは、伊那谷のアカマツを使う、ということだった。アカマツの家具にこだわったのは、地域特有の課題があったから。
伊那谷はアカマツが多い地域。伊那市では、カラマツに次いでアカマツが二番目で、民有林の21%を占める。

この「アカマツ」が厄介な運命の中にいる。

それがマツ枯れ病だ。輸入材木の中にいたマツノザイセンチュウというセンチュウがカミキリムシを媒介に、アカマツに入り、枯らしてしまう。昭和50年代に全国的での被害のピークを迎え、今も被害は継続している。はじめは標高の低く温暖な地域から始まったマツ枯れ病。そして今、標高はどんどん上昇し、僕らが暮らす標高700m以上の伊那地域にも広がっている。

広がっている、というよりも被害の最先端地域だ。ここ数年は長野県全体で毎年7万㎥もの被害が出ている。

マツ枯れ病になってしまったアカマツは被害が拡大しないように、薬品処理するか焼却処分される。さらに繊維がダメになってしまうため、材木としては使えない。

50年、60年、70年、80年、100年。

長い年月をかけて、育ってきた立派な木々が枯れていく。

枯れてしまえば、使えない。であれば、枯れる前にアカマツを使いたい。
枯れ行く命に次の命を吹き込むことができれば、アカマツは私たちの暮らしを豊かにしてくれる。

しかし、アカマツは広葉樹に比べて、軽くて柔らかいので椅子やテーブルなどの大物家具にはあまり使わない。アカマツが伝統的に使われてきたのは、家の梁材だ。アカマツを使って、これからの暮らしを豊かにするには、どんな家具を作ろう、と頭を悩ませた。

アカマツでつくる家具を考える

プロダクトデザイン事務所の「AR PIECE FACTORY 」の矢島夫妻のところに、森への想いを語りに行ったのは、2018年3月27日。暮らしを豊かに、森をおもしろく。

「軽いからこそ、持ち運んで使うような家具を作ろう」。その日に、目指す方向は決まっていた。軽やかなで、すっきりとしていて、外に持ち出したくなるような家具。

そこから、家具のデザインづくりがはじまって、何度も何度も試作して、壊れて、改良して、調整して、と繰り返していたら1年半が経っていた。

軽くて折りたためる無垢の家具。普段は家の中で、週末は森の中で使う。
誰かの暮らしと森が、ほんの少しでも身近になったら嬉しいな、と思う。

pioneer plantsという名前

pioneer plants(パイオニアプランツ )というのは、ある場所が裸地になったときに最初に芽を出して育つ植物のことをいう。その土地の風土にあった植物で、その土地の植生を切り開いていく存在。

その土地土地にあった木を使って家具をつくる、ということの意思表明。
何もないところに種が落ちて森への一歩目がはじまるように、私たちも森の未来を切り開いていく開拓者になりたい、という想いを込めてpioneer plantsという名前をつけた。

pioneer plantsを持って、どこに出かけよう。
できたら森の中で使ってもらいたい。きっと気持ちがいいと思うから。