“わたし”と“暮らし”を身軽にしていく森の家具【前編】

pioneer plantsのコンセプトは “暮らしを身軽にする家具”。折りたためることとアカマツを使った軽さが特徴なので、室内・屋外どこへでも気軽に持ち運ぶことができます。

 

今回、お話を伺ったのは「Owen’s Chair – クマのオーウェンさんのイス」を愛用している空間デザイナーの塚原朋子(つかはら ともこ)さんと、グラフィックデザイナーの大木洋(おおき よう)さんご夫妻。

 

2020年8月に二拠点生活をスタートしてから、1年4ヶ月。長野県・辰野町(たつのまち)へ移り住むと同時に独立をされた塚原さんと、都内の会社に勤め、リモートワークを経て独立に至った大木さん。おふたりは、移り住む以前から「クマのオーウェンさんのイス」を使っていたのだとか。

 

音楽が好きで、写真も好き。

 

そんなおふたりは、どのようにpioneer plantsのプロダクトと過ごしてきたのでしょうか。これから前編・後編の2本にわたってお届けしていきます。

 

●塚原朋子(つかはらともこ)さん

1992年東京都生まれ。都内のイベント演出・デザイン会社にて、ファッションショーやインスタレーションなどの商業空間・舞台美術を中心としたデザインに従事。2020年独立。展示会や店舗などの空間デザイン、撮影スタイリングやグラフィックデザインなど多岐に渡って活動中。

●大木洋(おおきよう)さん

1991年神奈川県生まれ。カメラメーカーにて、UIデザインに従事。グラフィックレコーディングなどの会話を可視化する手法を用いて、社外にも活動を広げ、2020年から辰野町と東京の2拠点生活を開始。 2022年4月にデザイナーとして独立し、辰野町を本格的な拠点に、グラフィックデザインや写真映像撮影を生業として活動中。

 

 

塚原さん:私たちが持っている「クマのオーウェンさんのイス」は軽くて運びやすいので、とにかくいろんなところに持ち出しています。家の中で使うことはもちろん、趣味のキャンプやフェスにも持って行くんですよ。

キャンプ場で「クマのオーウェンさんのイス」を使っている様子。(写真提供:塚原さん・大木さん)

塚原さん:フェスに持って行くものの中では、このイスがいちばん軽いかもしれません。会場でいい場所が見つかったら、いちばんにイスを置きます。奥木曽で5月に開催された「FFKT」のときは、心地がよくて思いっきり寝てしまいました(笑)。辰野町に移り住んでからは、自然のなかでイスを使うシーンがさらに増えたように思います。

 

大木さん:最近は「もう一脚ほしくなってきたね」って話しているんです。

 

塚原さん:フェスの会場で売られていたら、みんなきっと喜ぶかも!

 

-- 野外での音楽と心地の良いイス。想像しただけで最高の組み合わせですね。家の中ではどのように使われているのでしょうか。

 

塚原さん:基本的にはストーブの近くに置いてゆっくり過ごしています。最近は、こちらに来てから飼い始めた猫に特等席であることがバレてしまって・・・先に席を取られています(笑)。

名前は「ジャム」。由来はもちろん音楽からきています。(写真提供:塚原さん・大木さん)

塚原さん:普段は和室で使っているんですけど、意外といい組み合わせなんです。シートの色味が落ち着いているからなのかな。わが家ではイスの背景に障子があって、なんだか絵になるので、ついつい写真も撮りたくなってしまいます。

 

コットンやナイロンなど素材が異なる5つのカラーを展開。

-- 和室からフェスまで、幅広い使い方をされているんですね。

 

塚原さん:ロープを緩めるとリクライニングもできるんですよ。友人に「さすがに低すぎじゃない?」と言われたこともあるんですけど、とにかく低くして本を読むのがお気に入りの使い方なんです。以前、pioneer plantsのプロダクトデザインを担当されたアールピースファクトリーの矢島さんにお会いしたとき「ロープをいじれるようになったら玄人だね!」と言われたんですけど、結び目はきれいに残しておきたくて。まだまだ玄人にはなれそうにないです(笑)。

 

結び方は「ダブルフィッシャーマンズノット」と呼ばれる、釣りや登山で活躍するロープの結び方。

塚原さん:あとはどこで使ってるかな。自宅の庭にも持ち出しているよね。

 

大木さん:そうだね。庭でリモート会議に出ていると、手が届くところにある雑草がついつい気になって画面の下でこっそり抜いています(笑)。

 

塚原さん:ほかにも、自然風景を前に仕事をする「野良ワーケーション」のスタイルも楽しんでいます。今となっては “あれはどこだったんだろう・・・” と思い出せないような、たまたま見つけた空き地でもやっていました。車で走りながらお気に入りの場所を見つけて、見つけた場所でイスを開いて。

 

大木さん:この辺りだと車で20分ほど移動すればキャンプ場がたくさんあります。ワーケーションと言いながらも、心地が良くてワークせずにぐうたらしてしまうんですけどね。

おふたりのお気に入りの風景。(写真提供:塚原さん・大木さん)

-- おふたりが長野での生活を楽しまれている様子がたっぷり伝わってきたのですが、二拠点生活や移住についてはずっと考えられていたのでしょうか。

 

塚原さん:もともとは、彼が「移住したい」と言い出したことがきっかけでした。

大木さん:前職のときは品川で働いていたんですけど、満員電車やエレベーターなど密閉された空間がニガテで。その生活を長く続けていくイメージもなくて、ずっと生活を変えたいと思っていたんです。そんな時に訪れたのが、有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」での移住イベントでした。当初は同じ長野県でも下諏訪のあたりを紹介されていたんですけど、自治体のパンフレットがきちんとデザインされていたので、「移り住んだあとも仕事が見つかるんじゃないか?」と思えたのが後押しになりましたね。

 

野良ワーケーションの様子。(写真提供:塚原さん・大木さん)

大木さん:長野県だったら都内からもそれほど遠くはないし、夏は涼しい場所がいいなと思っていたんです。移住イベントに参加したあとすぐに下諏訪を訪ね、やまとわの奥田さんも関わっている「◯と(まると)編集社(長野県辰野町)」の取り組みのことを知りました。直近で奥田さんがゲストスピーカーとして登壇するイベントが東京で開催予定だったので、一度話をしてみたいと思って会いに行きました。

 

塚原さん:そのイベントがあった週の週末には、辰野町で定期的に開催されている「トビチMarket」に参加しました。奥田さんに「塚原さん、写真が撮れるんだったら撮影お願い!」と頼まれて、言われるがままに足を運んで(笑)。でも、そういう役割があったから、いきなりでも参加できたような気がします。打ち上げでみんなと話していくうちに、次のイベントにも誘っていただいて。それから月に1回のペースで訪れていると空き物件が見つかり、気がついた頃には住まいが決まっていました。

 

トビチMarketの様子。(写真提供:塚原さん・大木さん)

大木さん:初めの頃は、週末になると実家の車を借りて辰野町の家を改修しに来るような二拠点生活だったんですけど、今度は「いい車があるよ!」と連絡をいただいて。

 

塚原さん:それが2020年の4月だったかな。喜びも束の間、緊急事態宣言が始まったので、最初の半年くらいはずっと辰野町のことを考えながら過ごしていました。確かイスを買ったのはその頃だったと思います。長野県との縁ができて、辰野町やそこで出会ったみなさんのことを思い出しながら購入を決めました。当時は1Kの狭い物件に住んでいたのですが、ちょっとでもいいから外の空気を吸いたくて、ベランダに購入したイスを出して過ごしていました。

 

緊急事態宣言が出ていた頃はベランダでイスを使用。(写真提供:塚原さん・大木さん)

日常に制限ができ、思うように身動きが取れなくなってしまった2020年4月。そんな時におふたりが出会ったのが「クマのオーウェンさんのイス」でした。後編では、働き方や暮らしにおける心境の変化についても伺っていきたいと思います。

 

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(執筆・並河杏奈)